「図書館の本棚から 第30回」
図書館スタッフが読んだおすすめ本をご紹介します!
今回の担当者は、空が大好き、スカイブルーです。
今回紹介するのはこの一冊♪
書名:『よるのばけもの』
著者名:住野よる
出版者/出版年:双葉社/2016.12
ISBN:978-4-575-24007-8
今回ご紹介する本は、私の好きな作家さんである、住野よるさんの3作目の本です。表紙のイラストがこれまでのものとは異なっていて、何度も著者名を確認したのを覚えています。
この作品のテーマは中学校での「いじめ」です。
夜になると、化け物の姿になる主人公の安達が、夜の学校でクラスメイトの矢野さつきと出会い、誰にも知られてはいけない、二人だけの秘密の関係が始まります。矢野さつきは、クラス全員からいじめを受けており、主人公の安達も直接的ではないですが、いじめをしている側についています。昼と夜で振る舞いも違っていれば、姿も一人称も違う。そんな主人公の安達に矢野さつきは言います。
「昼の姿と夜の姿、どっちが本、当?」と。
この言葉が特に印象に残っていて、昼と夜でどちらが本当の化け物なのかと、葛藤する主人公の姿は深く考えさせられました。いじめをしている側の人間にも、それぞれの人生や自分自身の悩みがもちろんあって、将来のことを考えたりもするでしょう。「いじめ」という行為が悪いことだということを理解しているのに、そんな自分を顧みることもないどころか、自覚もない場合もある。被害者の心の内側まで傷つけたことを置き去りにして。
そんな人間の非情さや集団の残酷さ、「スクールカースト」の根深さがこの本には描かれていて、とてもリアリティのある作品になっています。また、「本当の自分」とは何か、「正しさ」とは何かということを考えさせられる作品でもあります。
語られていない謎が多くある作品ではありますが、学生の方にはもちろんのこと、大人の方にも是非手に取っていただきたいという思いから、『よるのばけもの』を紹介させていただきました。
春日部市立図書館に所蔵していますので、ぜひ読んでみてください♪
投稿日:2022年08月25日