「図書館の本棚から 第62回」
図書館スタッフが読んだおすすめ本をご紹介します!
今回の担当者は、忘れたいことがあったのに思い出せない御隠居です。
今回紹介するのはこの一冊♪
書名:『横道世之介』
著者名:吉田修一
出版者/出版年:毎日新聞社/2009.9
ISBN:978-4-620-10743-1
請求記号:913.6ヨシ
『続 横道世之介』――そんな題の本が平積みされていた時、二度見する程度には自分の目を疑いました。「横道世之介の続編が出たの? 私に断りもなく?」と混乱する程度にはうろたえました。『横道世之介』という作品は前作で完結しきっており、続編が生まれる余地はないはずです。
同時に、全国紙での連載終了後に掲載された対談記事を思い起こしていました。物語の続きではなく、ラストに至るまでの空白の期間に、主人公の世之介がどのように生きたのか、何を感じたのか知りたい。対談相手の言葉に、作者である吉田修一さんが心動かされるくだりがあり、わずかな期待を抱いたのも事実です。
『横道世之介』は、長崎から上京した大学生・横道世之介の学生生活1年間を描きます。読み進めるうち、前触れもなく突如として場面が切り替わります。別の物語が始まったかのように断絶した世界は、登場人物の二十年後の姿でした。彼ら・彼女らが、ふと世之介のことを思い出したところで、舞台は再び二十年前に。ふたつの時間を行きつ戻りつ話が展開しますが、二十年後の世界に世之介は現れません。世之介は今、どこに――。
「どうして自分のペンネームで思いつかなかったんだろう」と嘆息するほど、作者お気に入りのキャラクターである横道世之介。今回紹介した第1作のほか、冒頭で触れた『続 横道世之介』(文庫化にあたり『おかえり横道世之介』に改題)に加え、完結編である『永遠と横道世之介』(上下巻)も刊行されました。
すべて春日部市立図書館に所蔵していますので、ぜひ読んでみてください♪
投稿日:2023年12月28日